令和3年度 公認会計士論文式試験 講評~経営学

今回の経営学はかつてなく難易度の高い内容でした。選択科目にはあまり時間をとられたくない受験生の心情としては受け入れがたいレベルです。以下、問題ごとに講評していきます。

第1問

問題1:組織論

問1は組織階層と統制の幅の相関関係についての計算問題です。近年、組織論や戦略論でちょっとした計算問題が出題される傾向があります。自ら式を導出しての計算が求められるという数学のセンスが必要なため、苦手な方はスルーで良いはずの問です。ただし、今回は財務論が難しすぎるので、第1問で粘って得点する必要があるため、正答したかった問でした。

問2、問3は得点源ですね。dだけは、他にもプロジェクトチーム等の用語が頭に浮かんだと思いますが、「新規事業の立ち上げの独立性の高い組織」を作る「~制度」ということで「社内ベンチャー制度」が適すると思います。

問4は組織文化のメリットが問われましたが、文中に含めるべき3つの語句がヒントになっています。上手く作文できれば問題なしです。

問5のカニバリゼーション自体は初めて目にする用語であったとしても、「共食い」「既存事業から新規事業への転換」という問題文からおおよその内容は把握できたのではないでしょうか。この問でも文中に含めるべき2つの語句がヒントになっています。

問題2よりこの問題1の方が正答しやすい印象です。

問題2:ブランド戦略

問1と問3の「純粋想起」や「プッシュ型、プル型のブランディング」については、手が回っていなくとも仕方ない気がします。

問2の価格弾力性は管理会計論で学習する内容を援用できたと思います。

問4~問6は中学受験のような問題ですね。SDGsはいくつご存じでしたか。前後の文章から推定して一つでも多く埋めたいところです。

第2問

問題1:最適資本構成

リスク・シフティングと過小投資問題からの出題です。設例もシンプルですし、⑤の空欄補充でリスク・シフティングの問題と分かるので、対策していたとおりに解いていけたと思います。

問題2:ペイアウト政策

余剰現金の50億と土地の売却額100億(土地の活用時の機会原価になる)の扱いに注意が必要でした。問1の①~③あたりのFCFが与えられた企業価値や、負債の節税効果などは比較的シンプルな計算なので正答したいところです。

問2は自社株買した株式数を株価との関係で求める必要があり難しい問です。自社株買の前後で株価が変動しないと分かっていても、前提となる問1の株主価値の算定が難しく、パスした方が無難でした。

問題3:証券投資

問1、問2の期待リターンの計算、問3のβの計算は是非とも得点したいですね。

問4は、考慮すべき株主資本コストと言われて、期待リターンを求めれば良いと気付けたかどうかです。問5も問われているアルファがジェンセンのアルファと気付けたかどうかでした。

問題4:オプション

問1、問3、問5、問6については、オプションについてどれだけ知識の整理が出来ていたかで得点が変わってきます。できれば全問正答したいところです。

問2、問4の計算も是非、得点したかったですね。

第2問の中では問題4が最も解きやすかったのではないでしょうか。


以上です。