公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第4回
第4回は会計学(午前)管理会計論について振り返ります。
解答例はこちら → 会計学(午前)管理会計論-解答
第一問
第1問は、問題1、問題2ともに難易度が低く、高得点が狙えたと思います。
問題1:部門別計算
問1~問10までと、解答箇所は多かったですが、資料が少ないため、計算の難易度は低いことが容易に想像できたと思います。計算は、完答できるはずです。
理論ですが、「責任会計の観点から・・」、「責任会計上の利点を・・」といったように、「責任会計」という言葉が繰り返し使われています。
「責任会計」には、色々な定義づけがありますが、「責任者にとって管理可能な原価を集計し、管理可能な原価について責任を持たせる会計の仕組み」くらいのイメージで良いと思います。従って、管理不能なコストが集計されている状態は、「責任会計上問題がある。」ということになります。
問3.4.:単一基準配賦法の問題点、複数基準配賦法の利点
問4で、単一基準配賦法から複数基準配賦法に変更しているので、問3では、単一基準配賦法の問題点を答えることになります。ただ、問4で、複数基準配賦法の利点が問われているため、答案が重複しないように、配慮する必要があります。
本解答例では、問3は、計算結果を受けての理論なので、P製造部門での予算と1月実績の比較といった「具体的な」記述を行い、問4では、具体的なことには触れず、「一般的な」単一基準配賦法の問題点を指摘した上で、複数基準配賦法によればその問題点を解消できる、という展開にしました。
「責任会計上の観点から」ということなので、「単一基準配賦法では、特定の製造部門の責任者にとって管理不能な、他の製造部門の補助部門用役実際消費量の影響をうけてしまう。」ということは書いておきたいところです。
問7:実際配賦の問題点、予定配賦の利点
問7→問8は、問3→問4と同様の展開になっています。ここでも、答案が重複しないように、問7は計算結果を受けての設問なので、少し「具体的に」記述し、問8では「一般論」を書くという展開にしました。やはり、「責任会計の観点から・・」ということなので、予定配賦によると、「製造部門にとって管理不能な、補助部門における原価管理活動の良否の影響を製造部門への配賦額から排除できる」点を強調しておきたいところです。
問10:複数基準+予定配賦の問題点
「複数基準と予定配賦の組み合わせが最強」という結論で終わる問題が一般的ですが、本問では、その最強の組み合わせの問題点を指摘させています。この論点は、昭和の時代にも出題されたことがあり、こってりとした講義を行う専門学校では取り扱っているはずです。
例えば、100時間でできるメインテナンス作業をがダラダラと120時間かけて行った場合、予定配賦だと、予定配賦率に120時間を乗じた金額を製造部門に負担させます。この計算では、メインテナンス部門がダラダラと20時間も余分に作業した分も製造部門が負担することになり、責任会計上、問題があるわけです。頑張れば100時間でできた作業であれば、100時間分だけを製造部門に負担させるというのが、標準配賦の考え方で、この方法を改善案として答えることになります。
書ける人が少ないので、書けなくても合否に影響はないはずです。