平成30年公認会計士 論文式試験 講評~監査論

今回の監査論は、書くべき内容の見当もつかない問題は見受けられず、比較的答案を作成しやすかった気がします。以下各問毎に確認していきます。

第1問  継続企業の前提

継続企業の前提についての横断的問題です。事例の要素も含まれていますが、段階的に問が設定されているので答案構成しやすく、出題意図もはっきりしていてお手本のような問題でした。

問題1 継続企業の前提と二重責任の原則

継続企業の前提について重要な不確実性があるかを評価し、適切に開示するという「経営者の責任」と経営者の評価や対応策を検討し開示の適切性を評価して意見を表明する「監査人の責任」について、それぞれ区分すべきものとして説明していきます。そのなかで、監査報告書が企業の存続可能性を保証するものではない、というフレーズはできれば織り込みたいところです。継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況とか、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるとか、いちいちフレーズが長いので、たっぷりに見えて答案スペースもそう余裕があるわけでもなく、案外直ぐに埋まったのではないでしょうか。

問題2 継続企業の前提と監査計画リスク・アプローチ

監査計画リスク・アプローチのどちらにウェイトをおくかで、答案に幅が出たと思います。継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況がある場合に、必要となる監査手続きを監査計画に織り込む必要性や、対応が必要とされるリスクについて、記述できれば良かったと思います。必要な監査手続きそのものについては、問題3で問われているので、重複にならないような工夫が必要です。

問題3 具体的監査手続き

経営者の対応策として「主力金融機関の債務免除」と具体的に指示されているので、できるだけ監査手続きも具体的に記述します。目的については、事象又は状況があるだけで即注記とならず、重要な不確実性が認められて初めて注記が必要となる、という監査基準の改訂を意識して、「対応策によってもなお重要な不確実性が認められるかを確かめる」とします。

問題4 継続企業の前提と追記情報

追記情報と監査意見を区分する理由は、典型論点として答案を用意してあったと思います。また、継続企業の前提に関する注記は、監査報告書の強制的な追記情報となることも典型論点として用意されていたのではないでしょうか。ここは、皆さんの得点源でした。

問題5 継続企業の前提と後発事象

この問題は、決算日後に実施された債務免除が「重要な後発事象」にあたると気づけたかどうかでした。財務諸表に重要な後発事象として注記が行われたかは明らかではないので、この点も含めて監査人がどのような判断が必要か記述する必要があるとは思いますが、債務超過を解消するような債務免除ですから、重要性があるとして話を進めても問題ないと思います。