公認会計士論文式試験 平成29年度 講評~第2回

 問題2

問1:グループ法人税制 ~ 軽減税率の不適用

制度としての歴史は、組織再編税制よりもグループ法人税制の方が新しいわけですが、会計士試験では、グループ法人税制の方が先に、試験範囲に加わっていました。今回、出題された、「中小法人に対する特例措置」が不適用となる論点は、非常に有名なので、難なくクリアされた受験生が多いと思います。

資本金5億円以上の大法人に完全支配されている、又は完全支配関係のある複数の大法人に全株式を保有されている中小法人につては、すでに大法人に保護されているわけで、税制によって保護する要請が少ないと考えらます。このため、800万円以下の所得についても標準税率が適用されることになっています。

問2:恒久的施設

内国法人は、すべての所得について法人税の納税義務を負いますが、外国法人が日本の法人税の納税義務を負うかは、その外国法人が日本国内に恒久的施設を有しているかによって判定されます。支店などの恒久的施設を有する外国法人は、すべての国内源泉所得について納税義務を負うことになりますが、恒久的施設を有しない外国法人は、国内にある資産の運用等によって生じる所得についてしか納税義務を負いません。

今回は、国内にある建設作業場が恒久的施設にあたるかが問われていますが、もちろん、暗記できている受験生は皆無でしょうから、受験会場で、一斉に条文探しの旅に出ることになったと思います。勘のいい受験生は、第2条の定義から検索を始めたはずなので、比較的早く見つけることが出来たのではないでしょうか。

第2条(定義)12号の18 ロ
恒久的施設 次に掲げるものをいう。

ロ 外国法人の国内にある建設作業場(外国法人が国内において建設作業等(建設、据付け、組立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務の提供で一年を超えて行われるものをいう。)を行う場所をいい、当該外国法人の国内における当該建設作業等を含む。)

条文が見つかったら、本問の建設作業場が「一年を超えて行われるもの」という要件に当てはまらないことから、「恒久的施設」に該当しないと判定することになります。

問3:課税標準 ~ 総所得金額、山林所得金額、退職所得金額

所得税法の最初の講義で、「計算一巡」を学習している専門学校が多いのではないでしょうか。

その講義では、10種類の所得のうち、「山林所得」と「退職所得」以外を「総所得金額」とした上で、「総所得金額」は所得控除を行ってから超過累進税率を適用し、「山林所得金額」は5分5乗方式で、「退職所得金額」は「総所得金額」とは別にして超過累進税率を適用して、算出税額の計算を行うことを学習したはずです。

一般的には、税率を掛け合わせる直前の金額を課税標準といいますが、ここでは、「総所得金額、「山林所得金額」、「退職所得金額」がこれにあたります。言葉遊び的な問題は、個人的には好きではありませんが、この程度であれば、違和感なく、正解できたはずです。

問4:医療費控除

未払いの医療費が医療費控除の対象外となることは、有名な論点なので、間違えた受験生は少なかったはずです。

迷うのは、控除する10万円の適用根拠まで答案に反映させるべきかですが、与えらた答案スペースからすれば、「総所得金額の5/100だけで10万円を超えてしまう。」ことまでは書く必要がない、と判断すべきでしょう。

問5:特定課税仕入

特定資産の譲渡等(特定課税仕入)の論点は、先行して行われた本年度の税理士試験(消費税法)において、大々的に出題されています。こういった情報を得ていた受験生は、積極的に対策を取っていたことでしょう。

消費税は売上側が納付税額を計算し、申告納税する仕組みになっていますが、特定課税仕入については、仕入側で納付税額を計算し、申告納税することになります。

国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、サービスの受け手である国内事業者に消費税を課す方式をリバースチャージ方式といい、平成27年10月から適用が始まった、比較的新しい制度になります。

ただし、この仕組みが適用されるのは、サービスの受け手が「国内事業者」であることを要件とするため、本問のように、代表取締役Pが個人的に、電気通信利用役務の提供を受けている場合には、リバースチャージ方式は適用されません。従って、C社に納税義務があることになります。

以上です。